さて、近年さかんに話題となった、「学力低下問題」について、お話します。
①「学力低下問題」についてですが、
この場をかりまして、はっきりさせておきたいのですが、先ほどの「国語力の低下」と同時に「数学の学力低下」は、近年「騒がしいほどマスコミ」で捉えられました。実はマスコミなどの誤解があります。もし、皆様の中で「日本人の頭脳が低下したんだ」と思われている方がおいでになりましたら、本日ただいまから訂正してください。「学力低下問題」と言えば「いかにも日本人の頭脳が低下した」かの表現ですが、これは誤解で、いわゆる「訓練不足」「学習・勉強時間数の低下」と表現するのが適切です。②そして、
同じように「活字ばなれ」についても誤解を訂正したほうが良いと思われます。世間の「本屋さん」の状況もかつてとは大きく変化しています。現在の「本屋さん」には本がぎっしり並んでいます。今や、「本屋さんの本」は「コミック・雑誌」の全盛期です。「コミック・雑誌」であっても「活字」は印刷してあります。「なぜ活字ばなれ」なんでしょうか?これも「思索する・考える活字が使われていない、一過性の快楽をあおる活字が使われた本」の全盛期なんです。つまり、「活字ばなれ」ではなく、人間に有益な「教養を高めるための本」が敬遠されているだけで、「教養を高めるための、思索訓練をするための本ばなれ」が正確な表現です。③たとえば、
皆様のお子さんの小学生時代を思い起こしてください。現在の新課程の「算数」についてお話しますと、「分数の単元」は小学6年生で学習します。約20年前の旧課程の段階では、小学5年生の段階で基礎的な内容は終了していたんです。先ほどの「中学受験」も「高校受験」も同様なんですとお話したのは、まさにこのことなんです。ですから、「中学受験」では小学校の授業が「復習」として機能しないんです。実は、「分数の概念」は「数学」において、大変重要なことなんです。そして、現代っ子にとって「分数は難解な単元」「理解しがたい単元」で「苦手な分野」なんです。この重要単元を小学校を卒業する数ヶ月前に学習するのですから、中学1年生段階で「四則計算」が出来ない子がいて当たり前です。まだいえば、「円周率の問題」などは、実は整数・小数・分数の使い分けの範囲の問題なんです。④中国の3世紀ごろに作成された「九章算術」という有名な算術書に、
この「円周率の問題」が解説されています。概略でお話すれば、「たんぼの面積」をはかる単元に、たんぼが円の場合を例にして、この円周率には3種類あることが登場します。古来より、数学の発達の大きな要因に、この「たんぼの面積」をはかる必要がありました。つまり、時の権力者にとって一番の関心事である「租税徴収の問題」がそれです。この3種類とは、「整数の3」と「小数の3.14」と「分数の7分の22」のちがいが説明されているのですが、この3種類の円周率は「受験の世界」では、厳然と存在していて、この3種類が登場します。公教育においては、この円周率を「整数の3」と決めたり、「小数の3.14」と決めたりと、いったりきたり、反対に良い塾ではこの3種類の円周率を教えますし、おもしろおかしく「円周率の世界」のお話ができるわけです。つまり、約20年前から比べると「子どもたちに楽をさせ過ぎている」ということになります。私の表現でいうと、「愚民化政策にはまってはいけない」となるのですが・・・・・・(「九章算術」の詳細は、学力向上のための『推理式・指導算術のすすめ』をご参照ください。)⑤まだいえば、
私の20年以上の体験から申し上げると、首都圏・関西圏の受験加熱地域の「教師のお子さんの通塾率」は近年、最高値を示しています。この傾向は、「公的機関にお勤めの教師ご本人が一番実情をご存知である」という証拠なんですね。私立高校は、中高一貫教育が基本ですから、高校募集停止が常識です。すると、中学入試が加熱するのは「あたりまえ」です。ということで、ここ5年間は中学受験者が急増し、本年の首都圏・関西圏の中学受験者は、最高値を示しました。つまり、首都圏・関西圏では「優秀な生徒」は中学入試の段階で「青田買い」されています。また、「定員補充」で募集する場合は、外部の血を入れて活性化したいわけです。ここまでが、「家庭学習の前提・アプローチ」なんですが、これ以上お話すると、過激になりますので、次の課題に移ります。ここで重要なことは、先ほどお話したように「自分自身が幸福になるために勉強する」ことから考えれば、「受験の情報を知らないと、不幸になる。」ということなんです。
二00七年七月十四日
茨城県古河市 福祉の森会館ホールにて