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《家庭学習の正しい姿勢》
私は、しばしば「家庭学習はどのように進めていけば良いのですか?」との質問に遭遇します。家庭学習において、お父さんやお母さんが傍に付きっ切りで勉強を手伝っている姿は、とても美しい光景ですが、さてさて、この光景を思い浮かべる度に、私は「おっと、落とし穴にはまっているな!」と心でつぶやきます。聡明なご父母は、「傍に付きっ切りで勉強を手伝う姿」で子供に接しません。
なぜかと言えば、人に物を教えることは大変困難な作業を要します。「信頼関係」をいっきに失墜するリスクも負うことがあります。「お母さん、何でこんな問題できないの?」「お父さん、小学校・中学校の義務教育を卒業しているんでしょ!」との疑問が生じることにより、「父母への尊敬の念」は消えうせてしまいます。子供が勉強についての質問を提示した場合の「聡明な父母」の対応は、「学校や学習塾で、どのように聞いてきたの?」と、一義的にお子さんの環境情報を入手することから始めるでしょう。ご父母の時代の教育指導要領と現代の指導要領には、当然微妙な違いが存在します。ましてや、学校や学習塾の教師によっても指導法は千差万別です。
なぜこのような話から始めるかと言えば、「勉強(物事を究める学習)は、能動的に、師匠を見つけ出し、教えを請うことから始まる。」からです。人間は尊敬できる信頼できる人間の言うことしか納得しません。そして、尊敬できる信頼できる人間の激励を受けて「さあ、頑張って勉強しよう!」と思い、勉強も持続するのです。
このことはきわめて重要なことなのです。このことを納得いただいて、本題の話に移ることができます。
それでは、父と母が子供をバックアップする方途とは?
「“勝利の鐘”を鳴らす主体者は、子供自身であること。」を自覚させるための羅針盤となるのがご父母です。そして、「学習習慣を確立できる環境整備」に集中し、子供自身が自立できるように導くことが大切です。つまり、ご父母にとって一番大切なことは「自学自習の習慣」を如何に付けさせるか?であり、そのことを教えることが出来る聡明な師匠こそがご父母なのです。
《家庭学習の正しい考え方》
それでは「如何にして、家庭学習を充実させるか?」の命題の答えを伝授しましょう。
まず、スポーツの練習と家庭学習の考え方には共通点があります。子供に限らず、大人の訓練も共通するかもしれません。私の体験を披露しますので参考にしてみてください。
私は、かつて陸上競技短距離選手としてオリンピックで日の丸の旗を掲げる夢を描いた経験があります。私の陸上の師匠は『暁の超特急』の異名を持つ吉岡隆徳先生です。私はその夢を果たせなかった不甲斐無い弟子でしたが、最後の直弟子となったことは誇りに思っています。先生のことはバルセロナの男子400mで高野選手が決勝に進んだときや、シドニーの男子100mで伊東選手に決勝進出を期待する話題として紹介される程度ですが、実は1932年第10回ロサンゼルス男子100mで決勝進出し、6位入賞を果たした日本人唯一のスプリンターです。
また、1935年100m10秒3の世界タイ記録を樹立し日本人唯一の世界記録ホルダーの短距離選手であることはあまり知られていません。その後、ロケットスタートを伝授された直弟子の飯島選手が29年ぶりに吉岡先生の日本記録を更新します。
【吉岡隆徳先生から伝授されたこと】@練習プログラムは師匠を超えるまで師匠に作成してもらうこと。つまり、プログラム作成が慣れてくると「自分の得意分野の練習ばかり実施するようになる」ことを避けるための智恵です。自分の苦手分野を第三者に見てもらうことが重要。
A自分の得意分野が100mであっても、その他の種目にエントリーすること。ハードルは歩幅を伸ばす訓練・幅跳びはキック力の訓練などです。先生は「現代の選手は早く得意分野を特定しすぎる。」とも、よく言われていました。吉岡先生の時代の選手(織田幹夫先生・南部忠平先生・人見絹枝先生・・・)は1人が5種目にエントリーすることは当たり前でした。
B一日の生活の中で陸上競技の練習を忘れるな。つまり、「信号機を利用してスタート練習をする。」「バス・電車の車中では爪先立ちの練習をする」などです。練習は時と場所を選ばず出来るはず。スタート練習が夢にまで出てきて本物である。
C練習は試合と思い真剣勝負。試合は練習と思い筋肉を硬直させない。
D練習は「恐怖心の克服作業」である。実は、吉岡先生のロケットスタートはあまりにも低い姿勢(地面に胸をぶつける気持ち)で第一歩を踏み出すために、第一歩が筋力不足であれば「つんのめって地面と喧嘩するはめ」になります。
E最高に美しいフォームで走った時は、最高のタイムが出る。
F試合終了後に「余裕のある試合など無いと思え、決勝のテープを切った後が大事である。すべての力を出し切ったのであれば、その場で動けなくなるのが道理である。」とよく言われました。
【家庭学習に置き換えると】
@学習計画作成が慣れてくると「自分の得意分野の練習が増えてくる」ことを避けるために、第三者に作成してもらうこと。
A自分の得意分野が算数であっても、その他の国語・社会・理科などの科目をおざなりにしないで、算数の向上のために他の科目を真剣に学習する。
B学習場所は「家庭」だけではない。一日の生活の中で工夫・計画して実施できるはず。
C家庭学習はテストと思い真剣勝負。模擬試験などのテストは平生の学習と思い「脳みそ」を硬直させない。
D学習においては、「×をもらう恐怖心の克服作業」が重要である。ゆえに、仕上げた問題のマル付け作業は、ご父母がやること。
E学習結果は他者に理解されて最高のものとなる。日頃から他者に見てもらっても恥ずかしくない字で書く癖をつける。そして、「正しく」「早く」「美しく」を常に心がけることです。ゆえに、美しい文章・過程を作成するよう努力する必要もある。
F家庭学習後や模擬試験などのテスト終了後が大事である。すべての力を出し切ったのであれば、ぐったりと疲れているのが道理である。つまり、余裕を持った学習はありえない。
【家庭学習で留意しなければいけない点】
@家庭では文章は常に音読して、「五感を磨く」訓練をする。相撲の世界でよく使う言葉に「心技体」とありますが、学習も体全体で学習する訓練を癖付けることが大切です。
A好物を後まわしにする癖をなおす。テストなどの時間制限がある場合にこの癖が登場します。テストなどは得意分野から実施すること。時間切れ防止策。
B夕食後に家庭学習すると眠くなるとの理由で夕食前に強制的に家庭学習をさせないこと。「適当に物事を処理する癖」が定着します。食事をしても眠くならないような体をつくることも訓練です。
C子供が真剣勝負で学習に打ち込んでいる時は、母親の「片付け都合」で強制的に食事をさせないこと。また、子供の健康を気にしすぎて「早く寝なさい」は禁句。子供は真剣モードに入るまでに時間がかかります。当然終了時間も予定よりも延長します。つまり、「スピードが大事」「寝ることも訓練である」ことを理解させる必要があります。
以上が、私の体験から割り出した「家庭学習の姿勢」ですが、「家庭学習はどのように進めていけば良いのですか?」との質問には、いつもこのように返答しています。
《中学入試に勝利するための認識》
@私学が求めている生徒の力・・・・現代の私立中学校が求めている生徒の力、特に“算数”において要求される生徒の力は、以下の通りです。
◎計算力・基本的文章題の処理能力
◎基本的な図形の知識と思考力
◎規則性から類推し、分析する高度な思考力
そして、算数の先生も“国語力(読解力)”の低下には悩んでいます。また、現代では“知識量”のみで戦う時代は終わり、知恵・思考力の時代と言えます。中学入試の場合は“知識量の上に成り立つ知恵・思考力”が要求されているのです。
A膨大な情報量、広がり続ける知識量・・・・私学が要求する内容をクリヤーするには、絶対量を吸収するための“学力向上”の努力が必要となり、絶対量に対応できる力である“忍耐力”の養成が不可欠です。そして、情報を取捨選択する力である“知恵”と学習経験による“選択能力”の開発が不可欠ともなるのです。
【現代の問題点】
◎豊富すぎて無くしてしまう。多すぎて判断がつかない。
◎速過ぎると諦めてしまう。出来ることしかしない。
◎バーチャルリアリティ。いわゆる“ゲーム脳”
B学習で最も大切なことは、“解った”との段階で止めないで、“現実体験”をすることです。私は「文字と像が往来できる力」を“創像力”と呼んでいますが、“解った”段階ではこの“創像力”の養成がクリアーされただけです。ただし、この“創像力”を養成すること自体大変な作業を要します。次に、「文字から具体的な事柄を読む」“読解力”が必要です。次に、「思っていることを文字に表せるか?」の“表現力”の養成が大切となります。そして、「具体と抽象の行き来が出来る」こと、つまり“疑似体験”をより多く積む訓練が本当の学習なのです。
C「好きになる」「面白い」「なぜだろう」「友達がやっている」など、色々な“チャンスの芽”を摘まないことに注意する必要があります。つまり、伸びるきっかけ作りを大切にすること。
D学習は一生続くものです。学校通学の時期だけが学習ではなく、学校で習うものだけが学習ではない。「学習への生活習慣」「学習姿勢作り」がご父母の責務となります。そして、学習習慣は中学生時代よりも小学生の時の方がつきやすいことをご理解ください。具体的には、中学生時代に家庭学習を2時間以上できる習慣をつけることが“難関大学”合格の基礎にもなるのです。ですから、中学入試は“与えられた擬似試練”なのです。
Eこれからの学習は、絶対量へのチャレンジです。自分の枠を越える、自分の壁に挑戦すること。そして、より広く、より深く、自分の可能性を広げる自分との戦いを通して、乗り越えた壁、乗り越えたスランプの数だけ力になる。つまり、“合格の喜び”は苦労した分だけ深くなるのです。
《やってはいけないこと》
@ちりは積もっても山にはならない・・・・絶対量を克服するには、積み上げ方式の勉強をやっていては時間がかかります。誤解しないでください、これは「基礎計算を適当にこなす。」という意味ではなく。算数問題を解く場合には、まず“全体展望”して、“価値目標”を設定する。“価値目標”とは、「何の単元を勉強しているのか?」(自分にとって価値的か?)の意識を明確にし、解答を見てくれる相手は、自分の作成した解答を「美しく・光輝く存在」として認識してくれるであろうか?を常に考えて学習するという意味です。
A好物を後にまわす癖を付けるな・・・・前述したように、出きる問題から処理するくせづけをしておかないと、入試本番で“時間切れ”の後悔を残します。つまり、学習は“時”との闘いなのです。『時習学館』の命名の謂われは、ご理解いただけましたか?
B“何でできないの?”は禁句・・・・例えば、勉強を子供と一緒にやる時は「何でこんな問題ができないの?」は禁句です。この発言を聞いた瞬間から子供は萎縮し、反発心を起こして手が進まなくなります。子どもの心理状態を理解することが大切です。
C数学の頭で算数を指導するな・・・・中学生から学習する“数学”と、小学生が学習する“算数”の大きな違いは、中学生は“抽象化”の訓練で、小学生は“具象化”“具体化”の訓練と言っても過言ではないでしょう。“算数”の場合は、“線分図”や“表”などで図解して解き方を伝授します。ただし、現代の難易度の高い上位校を受験する場合は、“具体化”と“抽象化”を行き来する作業が必要となります。
《やらなければいけないこと》
@“正しく”“早く”“美しく”を認識せよ・・・・芸術・スポーツ・社会生活も共通だと思いますが、特に、算数の勉強では“正しく”“早く”“美しく”の3つの項目を意識しながら、答案作成を心がける必要があります。
A「ほめる」ことは成長の肥やしである・・・・受験の作業は「稲作」「花作り(ガーデニング)」と同じであると思います。“正しく”“早く”“美しく”完成させた答案をしっかり「ほめる」ことが、子どもの成長を急速に促進する肥やしであると思います。
B生活環境が答案に反映される・・・・受験の世界はバーチャルではなく、リアルの世界です。ご家庭での“生活環境”が色濃く答案に反映される世界でもあります。ゆえに、日頃の生活環境には神経を使うことが多々あります。
C中学入試は知識ではなく知恵で戦うもの・・・・ご家庭での“生活環境”が色濃く答案に反映される世界ですから、子どもが経験・体験した知恵が答案に反映されるのです。ゆえに、受験の世界は「いかにして知恵を研くか?」が課題となります。
D講義を受ける時代から「参加する」時代・・・・講義を受ける時代から、「参加する」時代とは、「わかった・理解した」から「やらせる・できた」「やろう・できた」の時代であるという意味です。
E自分の書いた字に負けるな・・・・自分の書いた字に負けるなとは、いくら「正しく」「早く」答案が作成できても、「ていねいに美しく表現」された答案でないと他者は見てくれません。つまり、“他者への思いやり”を理解させることが重要なポイントとなるのです。
《読解力養成の重要性》
さて、学力を向上させるためのもう一つの重要なポイントに、「読解力養成」の問題があります。算数の問題を解くといっても、問題文の要求している内容を把握できないと、「チンプンカンプン」です。
ここでは、「国語」の学習方法の基礎を伝授しておきましょう。
まず、右表の中心線よりも上に記載してある内容は、生徒・ご父母から見える範囲内の事柄です。これを「文章の上」と表現してあります。@からGの内容は、色々なテキスト・教科書などを見れば大体共通した項目です。ただ一つ付け加えると、中学入試の「知識」とは、「理科」「社会」との連動項目が多いので、立体的に学習する必要があります。
次に、表の中心線よりも下に記載している内容は、生徒・ご父母から見えない範囲内の事柄です。これを「文章の底」と表現してあります。実は、中学入試の「国語」で一番大切なことは、ご父母がこの「文章の底」の内容を把握しているか否かにより、お子さんの「国語」の学習意欲に差ができることを認識してください。つまり、「国語」の問題文・設問には、その学校の校風・基本方針が色濃く反映されます。まさしく、生徒さんの解答からそのお子さんの置かれている生活環境が浮き彫りになり、どのような生活実感を持って生活しているかが、手に取るようにつかめるのです。
この話を「父母会」などでお話すると、ご父母の大半からは「先生、国語は大変怖ろしい教科ですね。」とのため息が聞こえてきます。
そして、「国語」の攻略に欠かせないことが、「×をもらう恐怖心の克服=空欄撲滅大作戦」なのです。どの教科にも共通することですが、特に「国語嫌い」の生徒さんは、この恐怖心を取り除いておかないと、受験本番が近づくにつれ、勢いが無くなって行きます。
また、この図の内容は教える側の認識として大変に重要なことです。逆に言うと、この内容が理解できない教師は受験塾では「だめ教師」のレッテルを貼られる内容であると認識してください。
《ノートの工夫》
やはり家庭学習で重要な点は、「ノートの作成」に尽きるかもしれません。つまり、今まで述べてきた内容を集約したものが、「ノートの工夫」と言っても過言ではないのです。まだ言えば、この「ノートの作成方法」を詳しく教えてくれる「受験塾」は「良い受験塾」とも言えます。
学習する行動は、「家の建築」と同じと考えると、理解が早いかもしれません。「家の基礎」にあたる部分が、「テキスト」です。この基礎がしっかり構築されていないと、「実際に住める家」は建築できません。そして、足場・骨組み・壁・屋根などの躯体は、この「ノート作り」にあたります。
「テキスト」は与えられた材料ですから、しっかり自分のものとはなっていません。「ノート作り」を自分なりに構築することが、いかに大切なことか?「ノート作り」の過程で色々な事柄を学習するのです。また、師匠から教わった内容以外の「思わぬヒント」を自分で見つけ出す楽しみもこの過程に潜んでいます。中学入試の長い道程において、この「自分自身で作成したノート」こそが、大変大切な武器となるのです。
大半の「受験塾」のカリキュラム構成は、6年生の夏期休みまでに中学入試の全単元を消化する内容となっています。そして、「夏期講習」の前半では全単元のおさらいを終了させ、後半からいよいよ本番にむけての「入試問題演習」の準備に取り掛かります。この「入試問題演習」が「受験塾」の生命線ですし、一番個性が出る部分です。
「家の建築」で最後の仕上げともいえる「実際に住める家」にすることが、「受験塾」ではこの「入試問題演習」なのです。そして、この「入試問題演習」の時に活用される材料が、「テキスト」と「自作のノート」であり、刷り合わせ作業が必要となります。
ノートの作成方法の前に、ノートそのものについてのヒントを記載しておきます。ノートは、ルーズリーフのような一枚ずつ交換可能なA4版仕様が良いでしょう。なぜかと言えば、「足場」に相当する部分は必要なくなるからです。そして、刷り合わせ作業が進むと、進化した問題の差し替えが可能なノートが必要となります。そして、ノートは、見開き2ページ分を一単元として、作成すること。これは、単元ごとの煩雑さを避けるためには必要なことです。見開きにしたノートのどの部分に何を記載するか?を明確に決めておく必要があります。
次の「算数ノートの作成参考例」をご覧ください。
【算数ノートの作成参考例】
@ 見出し→「植木算」などの学習単元名を記載する。 A 学習単元名→@と同様ですが、「基本原形」「第一変化問題」「第二変化問題」「応用展開問題」などを追記しておくと便利です。 B 問題→「例題」に当たる部分です。手書きは持続困難となりますので、テキスト問題・テスト問題などをコピーして切り貼りすると良いでしょう。 C 推理法・解き方→推理していく順番などの解法までの過程を記載しておく。 D 自己コメント→例えば、「第一変化問題」でしたら、「基本原形」との推理法の違いなどのポイントを書いておくと便利です。 E 計算式・答え→テストなどで実際に記載する計算式と答えを丁寧に記載する。 F 改題・類題→「改題」とは、「数字がえ」や「小問」を増減してある問題の意味です。また、「類題」とは、類似した問題の意味です。これも問題をコピーして切り貼りすると良いでしょう。 「勝利の鐘」を鳴らす瞬間まで、この自分自身で作成した「自作ノート」が如何に重要であるか。
また、この「自作ノート」を作成する訓練こそ、自学自習の確立を容易にする決め手だったのです。