学力向上のための
『推理式指導算術のすすめ』 樹冠人
【この本を読む前に】
今、『推理式指導算術のすすめ』を発表するに当たり、なぜ『指導算術の解説書』の必要性を自覚したかの動機をお話して、本題に入りたいと思います。
私は長年受験塾に身を置き、『推理式指導算術』(以下、『指導算術』と呼ぶ。)の研究を続けてきた一人ですが、まさに現代の受験塾で使用している算数テキストに、『指導算術』の計算芸術が受け継がれていたことを発見したのです。これが動機となり、『指導算術』の解説作業を開始しました。
「理解力に異常な欠陥のある者はともかく、普通の推理系統を有する者にとって、算術が至難の学科であるはずはないとは余が二十年来の信念である。」とは、『指導算術』の序で創価教育学体系著者としての立場から述べられた牧口常三郎先生(以下、牧口先生と呼ぶ。)の言です。
また、牧口先生は「いかに教師の手腕を信頼するに足るとしても、よい材料とよき指導法を提供する良書なきときは、武器を失える戦士に等しい。」とも述べられています。
私が『指導算術』の研究を真剣に開始したのは、バブル崩壊時期とも重なる一九九0年からです。なぜ一九九0年かと言えば、この年に『指導算術』の全貌を『戸田城聖全集』で見ることができたからです。私が購入したこの本の巻末に、その時の感動を歌った句が残っています。
「我立ちて 悠久の誓願を 果たさんと
先師の思い 如何に伝えん」
現在、私が主催しているホームページで『今、蘇る!推理式指導算術(上巻)』のタイトルで解説を開始したのが、二00二年からですから、私が不敏なために、十有余年の月日を要してしまいました。そして、思わぬ転機を迎えたのです。私は教育応援誌『灯台』の「わんだーらんど」「目からうろこ!」の企画制作のお手伝いをしていますが、その編集部の「万人に理解できる文章を作成してください。」との激励が、下巻再構築の必要性を喚起してくださったのです。これこそ「目からうろこ!」でした。
つまり、私は「受験塾」という特殊な世界で生きてきた人間です。中学入試を希望する生徒のみを対象に生きてきました。『指導算術の解説書』を手がけている人間である私が、牧口先生の「普通の推理系統を有する者にとって、算術が至難の学科であるはずはないとは余が二十年来の信念である。」との基本精神を忘れていたことを猛反省しました。そして、『指導算術解説書(下巻)』は、二00五年の四月から一項目ごとに丁寧に万人にも理解できるよう、構成を刷新して作成を開始しました。また、この『今、蘇る!推理式指導算術(上巻)』は『指導算術』の紹介程度の内容・分量でしかありません。ゆえに、二00五年の五月から『今、蘇る!推理式指導算術(普及版)』と刷新し、本格的な『今、蘇る!推理式指導算術』は後日、完璧な形で世に問う時を待つことにしました。
『指導算術』の著者である戸田城聖先生(当時、戸田城外。以下、「戸田先生」と呼ぶ。)は、自序の中で、「実地の教授にあたっては用ゆるべき教科書がない。もちろん教える者の悩みは学ぶ者の悩みであり損失である。これ余が不敏をも顧みず推理練習を主眼とした本書発刊の動機である。」と。
まさしく、この戸田先生の思いに肉迫する『指導算術の解説書』を作ろうと決意したのです。
読者の方には、この論文『推理式指導算術のすすめ』は、『今、蘇る!推理式指導算術』の総論の位置に当たることをご了解いただき、読み進めてください。
学力低下が叫ばれている現代日本を生きる「未来っ子」の一助とならんこと、そして指導現場で汗水を流して指導されている「教師」の方々の一助とならんことを祈り、また、私の目を開いてくださった灯台編集部の皆さんに敬意と感謝を捧げ、私の自序とさせていただきます。
平成十七年四月二日
著者 枚方樹冠庵にて