《中学入試を取り巻く環境》

最後になりましたが、私の仕事柄、「学習塾」特に「受験塾」に限ってお話を進めましたが、現代の高校・大学の実態を少し触れて、中学入試状況を全体展望しておき、「推理力養成が学力向上の要諦」であることを伝授しておきます。

現在の大学・高校・中学の先生の悩みは?

@授業を受ける素地が出来ていない。

A四則計算ができない中学生の激増。

このような切実な悩みを先生方から打ち明けられますが、まさに日本の教育現場の実態はこのような状況なのです。いわゆる、これらの問題は「学力低下問題」ではなく、「訓練不足」の問題なのですが?

このような環境を背景にして、ここ数年の首都圏の「中学入試」は加熱しているのです。あと何年かすれば、大学入学が全員可能となる時代が到来するにもかかわらず。近年の暗い世相を背景にして「受験戦争時代」の到来を予感させる現象が続いています。第三期とも第四期ともいわれる「受験戦争時代」が到来しているのです。いな、まさに現代は「受験戦争時代」なのです。「公立中学校離れ」が進み、本年(2005年度)の中学受験者はピークを迎えたことが、それを物語っています。

次の資料は、二大受験塾の一つである「四谷大塚」が公開している資料です。

【四谷大塚資料】


   

この資料について少し説明を加えておきます。

まず「10年推移表」についてですが、1997年から2007年までの首都圏の小学6年生児童数は減少し続けています。いわゆる「少子化」の現象です。ただし、より良い教育環境を求めて、中学入試に果敢に挑戦した受験生は、年々増加しているのです。この現象は、いわゆる公立中学校の「学力低下」「校内暴力」、さらには社会現象でもある「フリーター」「ニート」などの問題への大いなる懸念が原因と思われます。

本年(2007年)の小学6年生児童数が首都圏で微増はしましたが、中学入試受験者が増加して受験率が16.9%になり過去20年間で最高値となりました。また、この現象は首都圏に限らず、関西圏にも波及していますし、全国主要都市圏でも同じ現象をかもし出しているのです。

では、現代の「小学生」を取り巻く中学入試状況についてご紹介しましょう。

まず、現代の国立・私立の中学入試の現状認識から羅列しておきます。

@  中学入試の対象校は、国立・私立の中学校であったが、公立一貫校の出現で門戸は少し広がったように見える。
A  共学化の増大、四教科受験型の強化。
B  中学校主催のプレテスト・入試模擬試験の実施による早期アタック。
C  多様なコース分けによる生徒確保。
D  複数受験日の設定の増加。

以上が近年目立つ特徴であり、大前提となります。

@については、公立一貫校の出現で門戸は少し広がったように見えますが、人気校はより難化しています。

Aについては、現代のご父母の方が聞くとびっくりする現象です。たとえば、国立の「お茶の水女子大附属中学校」が男女共学であることをご存知でしょうか?四教科受験型とは、受験科目が「算数」「国語」「理科」「社会」の四教科であるということです。やはり、偏った人間よりも総合的にバランスのとれた生徒を獲得したいとの思惑が働いています。なお、ここ数年の傾向ですが、受験生の早期四教科対策が充実していることも、見逃せない事実です。

Bについては、いわゆる「青田買い」の傾向が強く表れています。

Cについては、かつて見たこともない名称だと思いますが、「特別選抜(特選)」「特進」「特特」「T類」「試験・B試験」「午後受験」など、これも、現代のご父母の方が聞くとびっくりする現象です。「特進」「特特」「T類」などは、総合的なバランスではなく、特に秀でた才能の開拓を重視しています。なお、現代では「予行演習受験」(予行演習とは、志望校を受験する前に予行演習の受験校を選定することです。)を実施することは当たり前です。なお、「午後受験」の設定により、中学入試の「午前受験のみ」の常識が覆され「かけもち受験」が可能となりました。

Dについては、今や併願校数受験生の受験する学校数)の平均は前出の資料でおわかりの通り6校ですが、1月10日前後から入試が始まり、2月の前半(実際は3月まで続きますが)まで、「偏差値一覧」は中学校名でぎっしりです。

前述した「あと何年かすれば、大学入学が全員可能となる時代が到来する。」とは、新設大学を含め既存の大学の受け入れ者数、いわゆる、「受け皿」は、「少子化」も手伝って、あと何年かすれば受験者全員の入学が可能となるキャパとなるという意味です。つまり、「選ばなければ」受験者全員の入学が可能となる時代が到来するのです。しかし、ご父母は、「より良い教育環境」を求めるわけですから、上位校はより難化し、中位校はより駆け引きが横行し、下位校は定員割れへの努力が不可欠となるのです。

中学入試に果敢に挑戦している概ね15%の小学生の「学力低下」は大きな問題にはなっていませんが、問題なのは残りの80%強の公立小学校に通学している「学習訓練を受けていない」「学習訓練を受けていてもその効果が表れていない」生徒なのです。

それでは、『ウィンベル講座』でもご紹介していますが、具体的に現代の「中学入試問題」の推理法(解法)をご紹介しましょう。

【模擬問題】(ウィンベル教育研究所作成)

ここを右クリック、「対象をファイルに保存」で「模擬問題」を保存してください。

まず、前提のお話をしておきましょう。

前提 ポ イ ン ト
@  小学生の学習範囲内で設定してある。
A  東京のある中堅女子校(四谷偏差55前後)用として作成。
B  答えが正解でないとだめ。
C  必要な式・計算も解答用紙に記載すること。
D  100点満点で70点を合格とする。

そして、問題の推理法を伝授する前に、「入試問題」に挑戦する場合の注意点を明記しておきましょう。

注意点 注 意 項 目
@  全体展望して、時間配分を決める。
 この問題の場合は、50分で小問20問ですから、単純計算で1問を2分30秒平均で解く。しかし、後半になればなるほど難しい問題に設定されていますから、計算問題・一行問題を早く処理して、如何に後半を制覇するか?
A  70点合格なので、30点分は空白でも良いと考える。
 これは、「入試問題は、全問正解を目指してはいけない。」ということです。
B  単純計算で1問5点と考えれば、14問正解以上に挑戦する。
 「入試問題」の場合、標準的に60%〜70%(100点満点に統一されていないので%で表示)の正解率で合格点を獲得できます。
C  「指定された計算部分」以外の「計算」をどこに書くかを設定しておくこと。
 計算用紙が準備されていない場合は、問題用紙に自分の計算を書いて置くのが通常です。  

まだ付け加えると、「入試問題」の解法は「慣れ」も影響します。また、この前提は「算数問題」のみを考えた場合のことで、実践の入試では「国語」「社会」「理科」などの他教科との兼ね合いで微妙な違いが生じます。つまり、個人差により70点合格に上下が出てくると言うことです。

【アプローチ】

ここを右クリック、「対象をファイルに保存」で「模範解答」を保存してください。

  「模範解答」を見ながら各問題の出題分野を確認してください。

 1の(1)〜(4)  四則計算・還元算・計算順序・単位計算
 2の(1)  分数と比
 2の(2)  縮尺・単位変換
 2の(3)  数の性質・分数問題
 2の(4)  流水算
 3の(1)  おうぎ形と三角形の面積問題
 3の(2)  差集め算・過不足算
   食塩水の濃度問題・その関係式
   場合の数・順列
   水深変化とグラフ
   長さ・面積・図形の回転移動
   立体図形の体積・表面積

挑戦していただけましたか? ご感想はいかがですか?

もう一度述べますが、「小学校の学習範囲内で作成してある模擬問題」であり、「中堅女子校用の模擬問題」です。逆を言えば上位校の問題は、まだ難易度が高いということです。たぶん皆様の感想を予想すると、「こんな問題を小学生が解いているの?」「どうやって50分で仕上げるの?」「どうやって解くの?」等の驚きが渦巻いていることでしょう。

これが「中学入試」の実態なのです。

  中学入試「算数」を教えているプロの教師と現役受験生(それも、小6の全単元消化者)の方以外で、時間制限内で合格点を獲得された方は皆無でしょう。(断言して良いでしょう。)特に、「推理力」を養成しておかないと解くことができない問題が、3〜8の問題群です。「面積・体積問題」は、見る角度を変えて推理し、「どことどこの面積・体積を求めるか?」が重要なポイントです。そして、解答用紙をあたかも絵画のキャンパスのように捉え、如何に、「正しく・早く・美しく」の自己の芸術を発表するか?まさしく、「中学入試問題」は、中学校の作問者との戦いであり、「計算芸術」の展覧会でもあるのです。

詳しくは、「ウィンベル講座」をご覧ください。

  そして、算数は「過程を重視する学問」です。次の問題をご覧ください。

【変な約分】

この計算は、整数の割り算式を分数にして、その分数の段階で「変な約分」をしたのですが、等号が成立する例です。「入試問題」で解答に式や計算まで記載する要求は、ご理解いただけたでしょうか?前述の「数の不思議」でもこれに似た間違いをご紹介しましたが、小学生の頭の中は、大人が想像する以上に、奇想天外です。

「中学入試」の目的は、良い大学に入学するための「登竜門」ではなく、スポーツの訓練と同じと考えてください。私が「中学入試」に果敢に挑戦してくださいと推奨する理由は、二つあります。

一つは、消極的な推奨理由として「小学生でありながら、将来の幸福を希求できないゲーム脳になるとは忍びない。」他に何もやることを見つけ出せない小学生には、「是非、中学入試に挑戦させてあげてください。」と薦めます。

もう一つは、積極的な推奨理由として「自分自身の内面に、勝利の鐘が存在することを認識でき、その鐘を鳴らす喜びを知ることのできる人間に成長する。」ことができる小学生は素晴らしいと思いませんか?と。こんな小学生は大人になっても、この感動は一生忘れないでしょう。この一歩の歩みの重さを「中学入試」の訓練は、合格しても不合格でも教えてくれます。

「中学入試」の訓練の基本は、「正しく」「早く」「美しく」を追究することです。この三項目はスポーツの世界や大人の世界でも共通する大切なことです。私はご父母に、「三つ子の魂、百までも」を捩って「小六の魂、百までも」と良くお話しします。まさしく、小学生の段階でこのような訓練を積んだ子どもとそうでない子どもには大きな差が生じます。つまり、「中学入試」の経験を通じてその子どもは「人生の疑似体験」を積んでいるのです。

ただし、「自分自身の内面に、勝利の鐘が存在することを認識でき、その鐘を鳴らす喜びを知ることのできる人間に成長する。」ことを自覚させることのできる「優れた教師」が師匠であればの話です。

私は常々生徒たちに、「勝利の鐘は、あなたたち自身が鳴らすのだ!」と言い続けて来ました。そして、私はご父母には、スポーツの訓練とも共通することを例えながら、「中学受験の醍醐味は、自分自身の内面に、勝利の鐘が存在することを認識でき、その鐘を鳴らす喜びを知ることのできる人間に成長することです。」とお話します。

また、「自分の枠を越え、自分の壁に挑戦する。自分の可能性を広げ、自分との戦いで乗り越えた壁、乗り越えたスランプの数だけ力になり、合格の喜びは苦労した分だけ深くなる。」ともお話しします。

そして、結論として、「勉強習慣は中学生よりも小学生の時の方がつきやすい。小学生の時についた勉強習慣は崩れない。『小六の魂百までも』です。中学受験は人生の擬似体験ですからね。」とお話します。

家庭学習については『家庭学習のヒント』をご参照ください。

                  このページは、2007年5月に改訂しました。