『西郷南洲』(さいごうなんしゅう)


タイトル:西郷南洲(さいごうなんしゅう)
著者:長谷場純孝
序:天台道士・千頭淸臣
出版書写事項:大正十四年(1925年)七月十日 十版発行
形態:一巻全一冊(A5版)
発行者:株式会社博文館 大橋進一
印刷者:多木壽一
印刷所:多木印刷所
発行所:株式会社博文館
目録番号:win-0040006
『西郷南洲』の解説
西郷南洲こと西郷隆盛(文政十・1828~明治十年・1877)については、「西郷南洲先生遺訓」で説明したので省略するが、著者の長谷場純孝(安政元年・1854~大正三年・1914)は、明治から大正にかけて活躍した政治家であり衆議院議長を務めた人物である。薩摩藩で西郷南洲に薫陶を受け、私学校に在籍して西南戦役(西南戦争・西南の役とも呼ぶ)に参加して捕虜となったため生き延びた。そして、長谷場は当時を知る数少ない生き証人となった。
序文に登場する天台道士とは杉浦重剛(安政二年・1855~大正十三年・1924)のことで、杉浦は日本学園の生みの親であり、政教社の雑誌「日本人」の発刊にも関った。谷干城(天保八年・1837~明治四十四年・1911)らの出資による新聞「日本」の創刊にも関った。なお、昭和天皇に倫理を進講したことでも有名である。
また、同じく序文を担当した千頭淸臣(安政三年・1856~大正五年・1916)は、土佐藩士の子として生まれ、東京帝国大学を卒業して英国に留学した。その後、一高と二高の教授となり、栃木県・宮城県・新潟県・鹿児島県の知事も歴任している。著作には「ナポレオン伝」「坂本竜馬伝」などがある。
今回紹介する博文館発行の偉人傳叢書第三編「西郷南洲」は、「修養時代」「幕末の雄飛」「失意と逆境」「時代の風雲児」「王政維新の殊勲者」「明治新政府」「西南戦役」「補遺」と八章から構成され、最後に「附録」として著者の詩歌が掲載されている。
特に、「明治新政府」の章の「征韓論破裂」の項目では、「遣韓大使問題」について詳しく経過を説明して、参議陸軍大将近衛都督の職を辞する顛末を詳説している。また、「私學校」の様子について「銃隊學校」と「砲隊學校」の二つがあったことを詳説し、明治十年の変乱の伏線を記述している。そして、南洲は上杉鷹山公の「偉蹟録」を読み、「生財論」を著述したことも記述した。
西南戦役については、著者自らが参戦したこともあり、詳細に南洲の発言などを記述している。そして、「熊本城攻圍」「肥薩隈及び豊後の戦闘」「城山最後」と南洲最期の顛末を詳説している。そして、第八章の「補遺」で、南洲の「人物及び性行」と「遺訓」で締め括っている。
著者は最後の「附録」に、多く他人に示さなかった長編歌「越しの獄にてよめる歌」を南洲最期から三十余年が過ぎた感慨を込めて披瀝している。
所蔵者:ウィンベル教育研究所 池田弥三郎(樹冠人)
平成二十三年(2011年)二月作成