『甦る日本史』(よみがえるにほんし)



タイトル:甦る日本史(よみがえるにほんし)
著者:渡部昇一
出版書写事項:平成八年(1996年)七月 初版発行
形態:三巻全三冊 文庫版
発行所:PHP文庫
目録番号:win-0010002
『甦る日本史』の解説
頼山陽(安永九年・1780~天保三年・1832)の幼名は久太郎(ひさたろう・きゅうたろう)、諱は襄(のぼる)、字は子成。山陽は号で、晩年には三十六峯外史とも号した。頼山陽といえば、明治から昭和の終戦にかけてその名を知らない者は皆無であった。幕末から明治にかけての尊皇思想を普及させるのに最も影響を与えた人物であり、特に、幕末維新の志士たちは、「日本楽府」「日本外史」「日本政記」を持ち歩いていたと伝えられている。
今回紹介する書籍は、著者の渡部昇一(わたなべしょういち・昭和五年・1930~平成二十九年・2017)が頼山陽の『日本楽府』の注釈を「歴史街道」に連載した『日本史の真髄』を改訂して、文庫本として出版したもので、『甦る日本史』と名づけられた。なお、著者は英語学が本業であるが、史論家としても有名で古書蒐集家としても有名である。そして、頼山陽と徳冨蘇峰と樋口清之を高く評価している。
『日本楽府』に収録されている聖徳太子から豊臣秀吉までの通史を踏まえた史詩六十六曲の注釈に当たっては、著者が福山天蔭の『頼山陽の日本史詩』と頼山陽の弟子である牧百峰の注解を参考にしながら、「日本外史」「日本政記」「大日本史」を精読して注解していることが優れている点である。
『甦る日本史』の中で、著者の少年時代(戦前)と戦後そして現代の歴史教育の内容を対比して、「歴史事件には詩や和歌の存在があり、一幅の絵になる情景が描きだされている。」にもかかわらず、戦後・現代の歴史教育には「詩情の欠落があること」を強調している。
著者によると、「『日本楽府』は、第一闋の「日出処」では聖徳太子が当時の大国である隋と日本との対等関係を主張し、わが国柄の尊さを強調している。そして、最後の第六十六闋の「裂封冊」も豊臣秀吉が大明国に対する対等関係を主張し、日本には皇室の存在することを強調して、首尾は見事に貫徹している。」と述べている。
また、刊本では最終闋は「裂封冊」であるが、山陽自筆の稿本によると、最初は「耳塚」のことを詠じたものであった。しかし、後に後半を訂正して「裂封冊」にしたものである。これを著者が「幻の最終闋」と題して説明している。京都市東山区の豊国神社前に現存する「耳塚」を題材にした幻の闋の説明は、京都を旅行しようとする人には参考となる資料である。
原典の「日本楽府」を読む場合、この『甦る日本史』は大変に重宝する書籍であった。「日本楽府」原書と見比べながら精読すると、六十六の事件・出来事の背景と山陽の意図が浮き彫りとなり、歴史に対するより一層の探究心が涌いてくるのが不思議である。
所蔵者:ウィンベル教育研究所 池田弥三郎(樹冠人)
平成二十二年(2010年)八月作成